税金滞納により赤字の横綱だった
市制施行に先立つ6月に県に提出された「新市建設計画書」においては、市役所をはじめ、学校・図書館などの教育文化施設の整備新設、保育所・児童公園の新設、各種道路の新設。改修などをめざすなど、公共施設の拡充をうたい上げていた。それらは、旧春日部町と旧四村の格差を埋め、一つの市としての実体を持つために不可欠なものと意識されていたが、国の地方交付金削減(前年比600蔓延減)、市税滞納の累積という財政状況のもとでは容易なことではなかった。
この時期の市町村財政の窮乏は全国的なものであったが、特に春日部市域では、昭和28(1953)年12月「埼葛71の町村中赤字の横綱は春日部、豊野の二町村」と報じられるほどであった。両町村とも、過年度を含む町村税の滞納と中学校建設の長期起債があり、春日部町ではその上、3月に失火で焼けた春日部高校再建の地元負担金500余万円を抱えていた。これらの滞納金はそっくり新市に引き継がれ、この点からもスタートしたばかりの市財政は、市長自身が認めているように「各町村の持ち寄り予算で、相当無理」なもの(市制だより第三号)であった。
市は「今後市営住宅を申し込む場合でも滞納のある場合は、資格がなくなる」(市制だより第三号)として、納期までの納税を呼び掛けた。また、市税総務課では納税組合設置運動を起こし、昭和30(1955)年11月末現在で110組合、2万2名の加入をみて、29年度納入率を86パーセントとした。
歳入の繰上げ、繰り出しなどで財源確保
昭和29年度の9か月間(29年7月~30年3月)の市事業は、一般会計の腐朽著しい春日橋の架け替え工事をはじめ、特別会計の内牧小学校工事、八木崎・一ノ割地区の市営住宅増築などの諸工事を完成させた。決算額は、一般会計繰上充用額、1947万7729円、合併前の旧町村の赤字解消のための繰出金1078万円、特別会計への繰出金1528万円、計4555万7729円の繰上充用金・繰出金を要した。
※(地方自治法上の繰上充用)
繰上充用とは、地方公共団体の会計決算において、会計年度経過後にいたって歳入が歳出に不足することとなった場合に翌年度の歳入を繰り上げて不足分に充てることをいいます。この場合、そのために必要な額は翌年度の歳入歳出予算に編入しなければならないこととされています(地方自治法施行令166の2)。
※(繰出金)
一般会計と特別会計、または特別会計間で支出される経費。地方公共団体の一般会計から、介護保険事業会計・国民健康保険事業会計・地方公営企業会計などに対して繰り出される負担金など。
このような困難は翌30年度も同じで、31年「市政だより」における年頭の挨拶で、山口市長は「現在まだ市には財政的な余裕というものはありません」と率直に認め、2月には「31年度の予算で初めての春日部の実体が表示」される時とあるとして、新市建設五か年計画の遅れを取り戻し任期中に軌道に乗せる決意を表明した(市政だより第九号、第十号)。31・32両年度に至って、新市建設事業が緒についたといえる。
『春日部市史 第六巻 通史編II』(平成7年3月発行)
現代(昭和戦後期)
第二章 春日部市の誕生
第三節 公共施設の充実
財政的対応(P377)より要約