■県議会議員の仕事とは?
<自民党がいい条例を出せば、賛成する>
――県議会議員は議会のほかにどのような仕事をされていますか?
多くの県民の皆さんは県政が遠いという実感を持っていると思います。国政でしたら財政や外交、国会の様子から政治家本人の私生活に至るまで、さまざまなニュースが毎日流れています。市議会なら春日部市なら32人の市議会議員がいて、市内の問題について相談もしやすいし、市内のさまざまなイベントに参加しているから知っている顔も多いでしょう。
ところが、県議会は93人で春日部市は東第7区という選挙区で、定数は3人です。ニュースになることも少ないですから、県議会議員がどんな仕事をしているのかも、よくわからないと思います。
だけど埼玉県は一般会計だけでも1兆8884億6000万円(平成31年度予算)にのぼります。県として大きな仕事をやっているのは間違いないわけですね。公立学校の教員の給与は県が負担していますし、小中学校の義務教育は市町村が担当しますが、高校と特別支援学校は埼玉県が基本的に運用しています。また、警察は県の所管になりますね。
それに30年度からはこれまで市区町村が主体だった国民健康保険が、都道府県が財政運営の責任主体となることになりました。
そういうことを見ていくと、実際は一人ひとりの生活にかかわっている仕事がたくさんあります。
私は当選以来、議会が終わると議会報告のチラシを配布しています。県議会議員は政務活動費を月々50万円いただいているんですね。年間で600万円にのぼります。それを利用してかならず議会報告をやってきました。
――与野党の構図は国政と同じですか。
県政では会派となっていますが、93人の定数の内訳は欠員が10名で、埼玉県議会自由民主党議員団(自民)51人、立憲・国民・無所属の会(立憲・国民・無所属)9人、埼玉県議会公明党議員団(公明)8人、無所属県民会議(県民)7人、日本共産党埼玉県議会議員団(共産党)5人、無所属改革の会(改革)3人となっています。
自民党系の自由民主党議員団が議席の過半数を得ているので、条例案を出せばほぼ100%で可決します。埼玉県の自民党は私たちからみても、いい条例を出すことがあるので、賛成することもあります。野党だからといって、なんでも反対という立場ではないんですね。
特に、いまの上田清司知事は1期目の2004(平成16)年に4期以上の知事連続立候補を辞める「多選自粛条例」を作っておきながら、それを破って2015年(平成27年)に4期目の立候補をして、4選してしまいました。それから自民党は対決姿勢を強めていて、この4年間知事が新しい条例を提案できたことが一回もないんです。
自民党は「自分の作った条例を守れないような知事が議案を提案することができるのか」と思っていると思います。だから自民党はいろんな先進的な条例を研究して若手を中心にプロジェクトをつくっていくつもいい条例を出しているんです。
たとえば、埼玉県主要農作物種子条例。これは2018年4月に国の主要農作物種子法(種子法)が廃止されることで自治体が責任を持って優良な種子が安定的に供給されるために責任をもつということで、自民党が提案した条例でした。埼玉県議会では、この条例は全会一致で可決しました。この条例を定めているのはほかに新潟県と兵庫県だけなんですね。これは非常に評価しています。ほかにも犯罪被害者等支援条例もそうです。これは犯罪にあった方にはほとんど金銭的な支援がないんですね。国が用意しているのはありますが、要件が厳しくて簡単にはできない。だから、県として支援の体勢をつくるというものです。そこで具体的な金銭給付にもっと言及があった方がいいんじゃないかという質疑もしました。
<県議会は県議全員が質問するものではない>
――議会での質問は、市議会と比べると全員がしているわけではないですね。
県議会は会派の代表質問になるんですね。ですから、たとえば53人いる自民党では、代表質問はそう簡単にめぐってこない。任期中に2回あればいいほうじゃないですかね。ですが。共産党は5人しかいませんから、今期は3回(2018年9月定例会、2017年2月定例会、2015年6月)できました。
2018年9月議会では県庁直轄の施設である春日部特別支援学校がものすごい過密になっているので過密対策を急ぐようにと旧岩槻特別支援学校に再整備して、対応しなさいと提案したんです。それで31年度予算で5か年で200人の独立した特別支援学校ができることになりました。春日部市だけのことではなく、全体のことを見ながら提案をしていき、見事に提案通りになってうれしかったですね。
また、児童相談所は県内に7つあり、そのほかに草加支所もあるんですね。児童相談所は人口100万におよそ一か所となっているんですけど、10年くらい前と比べると相談件数が10倍くらいになっている。昔のままでいいわけがないですよ。それで東第8区(越谷市)選出の同党の金子正江議員が12月議会で草加支所の充実を求めたところ、予算がついて草加児童相談所になって50数人の職員を配置するという独立したものになることになりました。
質問機会は少ないですが、議会での質問から予算がつくということが非常に多いので、そのために必要な情報収集は常にしていかないといけませんね。
■春日部はどう発展していくか?
<春日部市は子育て支援にもっと力を入れなければいけない>
――春日部市に対しては、どのような働きかけをしていますか。
市に直接言うことはできませんが、市議会には共産党議員もいますので、情報交換はしっかりとやっています。そこで気になるのは子育て支援ですね。
春日部市は子育て支援にもっと力を入れなければいけないと思います。春日部市では育休で休んでいると、一年間はいいけれど、それをこえると上の子を保育所に入れられないんですね。春日部市のほかに所沢市もそうです。妊娠・出産から乳児の子育てはとても大変です。これは大至急改善しなければいけません。
また、年度末になると3桁の待機児が発生します。年度のはじめの待機児童はほぼ解消されましたので、年度途中からでも入所できるようにしていってほしいですね。
それと、市議の時代から強調しているのが市立病院を持っていることの素晴らしさです。市立病院は市民の宝だと思っています。一時、小児科や産科が閉鎖になって市立病院の危機だった時代がありました。小児科と産科というリスクが大きくて儲からない医療を受け持つのが公的病院ですから、市立病院をしっかり支えていくことは、使命だと思っていました。
<春日部はソフト面の充実がまだまだ>
――鉄道高架が決定し、東埼玉道路の工事も進んでいますが、春日部は変わっていきますか。
東埼玉道路ができようが春日部駅が高架になろうが、人口増とはあまり関係ないと思います。利便性はたしかにあがるでしょうが、そこで安心して暮らしていけるかという話とは違いますから。
春日部は災害が非常に少ない地域だと思います。非常に災害が少なく平坦で暮らしやすい。だからソフトの面で充実させればあえてハードで目立った整備をしなくても暮らしやすいまちにはなると思いますね。
――ソフトというとたとえば、どういうことでしょうか。
ひとつは周産期医療の充実ですね。市議時代ですが、2008年に春日部市立病院の充実と小児科、産科の再開を求める請願の署名を約3万8000筆以上集め、市議会で充実についてのお願いをしまし。
実は石川良三市長は、三枝安茂前市長が市立病院を新しく作り替えるという委員会を何回もやってつくっていた計画を一期目の選挙に出るときに白紙だと言い始めたのです。それで当選してから共産党、公明党、自民党系の会派も巻き込んで10回くらい会合を開いたり、自治体病院協議会の会長である小山田惠氏(当時)を庁舎内で講演をしたり、日大医学部長の片山容一教授に市長にも出席を求めて講演を聞いてもらったりして、再建の流れを確かなものにしていくという努力をしたんですね。
そういう経過もあって、いまではPET(陽電子放射断層撮影)検査も導入するなど、最新機器を入れて、設備を充実させています。石川市長はものすごい評判がいいと誇っていますけど、ああなるまではなかなか大変でしたね。
また2018年9月の一般質問で医療センターを地域周産期母子医療センターに認定するようにお願いもしました。地域周産期母子医療センターに認定されると県から毎年3000万円の補助金がでるようになります。いまは新生児センターで年間200万円しか補助金が出ません。
なにより、春日部市内には3か所しかお産ができるところがないんですね。武里の分娩館医院、せんげん台の彩都レディースクリニック、あとは市立医療センターですね。そういう点でも公的な医療機関がしっかりやる。医療センターにはNICU(新生児集中治療室)も3床稼働していて、新生児継続保育室(GCU)も10床稼働させています。そういう役割があるので絶対につぶしてはいけないということも市議会時代はやっていました。それを県議になって、県としての認定をして、物心両面の支援を提案しています。
――出産・子育ての体勢はまだまだで必要しょうか。
必要ですね。もっと子育てもしやすく、老後も安心して暮らせるまちづくりにもっと力をいれていかないといけないと思います。
春日部の郊外では買い物もむずかしいでしょうから、宅配やコミュニティバスを整備して高齢者も安心して生活できるようにしていく。
子育ては未来への投資ですから、最優先でやっていく。児童館も貧弱で、あと4つくらい作らないといけない。子どもが遊べる遊具が充実した公園も少ない。やはり子育て支援が春日部は目に見えて弱いと思います。
そういうソフトが弱いと、子育て世帯から「春日部に住まなくてもいいんじゃないか」と思われてしまいますよ。いくらハードに予算をかけても、利便性は東京や大宮には勝てませんから。都心を真似するのではなく、かゆいところに手が届く子育て支援をつくっていかないと若い世代からそっぽ向かれますね。
ですから、子育て支援について議員が提案するのはもちろんですが、地域の親世代の切実な要求行動がもっとストレートに上がるような仕組み、それを敏感に受け止められるという議会・市役所になる必要がありますね。
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