『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』(¥1,728)
集英社 2017年11月24日刊
畠山 理仁(著)
2017年 第15回 開高健ノンフィクション賞受賞作。
フリーランスライターの畠山理仁氏は選挙取材をメインのテーマにしている。
――なぜ選挙に出るのか?
そしてこの問いを発し続けている。本書は、その畠山氏の問いを一冊にまとめたものだ。
選挙は出馬するだけでお金がかかる。
たとえば立候補者は供託金を納めなければならない。
衆院選の選挙区から出馬する場合、300万円だ。
市区長選は100万円。
市議会議員選挙は30万円になる。
まず立候補者はこれだけのお金を集めなければならない。
もっとも供託金は一定数以上の得票となると返還されるが、一定数以下となれば没収だ。
選挙は水物。どうなるかは開けてみなければわからないものに少なくないお金と人生をかける。
選挙に立候補するということは、すごいことなのだ。
もちろん、世襲や後継、金持ち、団体からの支援がある「持っている」立候補は別だ。
選挙中も落選してからもさまざまな支援を受けられるのだから、リスクは「持たざるない」候補者より圧倒的に少ないからだ。
二世三世という政治家一家が生まれるには、理由があるのだ。
しかし、それでいいのだろうか。
政治は政治家のものでもないし、政治家一族のものでもない。
ましては地方政治はメディアのチェック機能もなかなか働かない。
住民によるチェックも難しい。
地方こそ、世襲や後継によらない、独立した意思と地域に新陳代謝を促す政策をもった政治家が必要だとは思う。
まずはさまざまな意見を持つ候補者が出ることだ。
そして候補者にはできる限り公平な露出の機会を与えるべきだろう。
しかし実際にメディアにとりあげられる候補者は、限られている。
圧倒的多数の候補者は、選挙公報などの公的なメディアで紹介される以上の露出はあまりない。
そんなメディアに相手にされない候補者を取材しつづけたのが著者の畠山氏だ。
報じることよりも、報じないことによる機会損失は大きい。
だからこそ、選挙はさまざまなチャンネルを使ってさまざな手法で訴える必要がある。
それを取材を通して教えてくれる好著だ。
日本の公職選挙における供託金の金額
国政選挙
衆院選(選挙区) 300万円
衆院選(比例区) 名簿単独登載者数×600万円
参院選(選挙区) 300万円
参院選(比例区) 名簿登載者数×600万円
都道府県知事選挙 300万円
地方選挙
政令指定都市
市長選挙 240万円
市議会議員選挙 50万円
一般都市
市区長選挙 100万円
町村長選挙 50万円
都道府県議会議員選挙 60万円
市区議会議員選挙 30万円
町村議会議員選挙 供託金は不要